不安定な構図
じっくりと構図を練って撮影を行うと、絵画を彷彿とさせる上質な作品を生み出せます。そのため写真教室や写真のテキストでは、「正しい構図はこうあるべき」と教えています。しかし、それが必ずしも正解でないところが写真の面白さでもあるのです。
正しいと言われている構図をあえて無視し、水平線や地平線を斜めにしたり、三分割法を壊したり、主題を画面の隅に追いやって写真を撮っても、生み出される1枚1枚は立派な「作品」として成立します。
これは、十年ほど前にアメリカ、ニューヨークで撮った写真です。歩いてマンハッタンの風景を次々と切り取っていたとき、構図のことは深く考えていませんでした。随分と背の高いオフィスビルだな、やはりイエローキャブは目を引くな、ニューヨーカーの歩くスピードは早いな……と、何かを感じた直後にカメラを向けてシャッターを切ったのです。被写体が斜めになっていたり、主題が半分切れていたりと、どの写真も失敗作のように見えますが、私はそうは思っていません。不安定な構図で切り取っているからこそ、大都会の雑多な感じが強調された「作品」になっているのです。

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