カナダ、プリンス・エドワード島──。まだ暗いうちに宿を出て、郊外へと車を走らせました。この日は神秘的な朝霧が立ちこめています。三脚にカメラを固定し、霧に包まれた静寂の風景にレンズを向けていると、遠くの方からゆっくりと近づいてくるものがあります。
スクールバスでした。
バスは家の前に止まり、子どもたちを一人ひとり拾い上げながら、霧の中をゆっくりと進んでいきます。その動きがあまりにも緩やかで、ピタリと止めて捉えることができました。
霧の中から突然現れた黄色いボンネット型のバス。シャッターを切った瞬間の感動は、今も鮮明に覚えています。
現像が上がったフィルムを見たとき、気づいたことがありました。電線が朝日を受けて、キラリと光り輝いているのです。
高校時代、はじめて雑誌のフォトコンテストで入賞した写真があります。夕陽に照らされた電線を捉えた一枚で、「光る電線」というタイトルをつけました。あの日から何十年も経って、カナダの朝霧の中で、同じ光に出会うことができたのです。
この作品を見るたびに、あの朝の清々しい空気が蘇ってきます。
撮影地:カナダ、プリンス・エドワード島
撮影日:秋
機材:6×4.5 フィルムカメラ 150mm
フィルム:リバーサルフィルム
発表:写真集『光ふる郷』『MORNING LIGHT』