車で旅をする
海外取材ではレンタカーが主な移動手段になります。空港で車を借り、2~3週間の取材期間中はずっとその車と共に過ごします。そして取材が終わると同じ空港で車を返却し、帰国便に乗るという流れです。
20代の頃から海外をテーマに撮影活動を行っているので、異国の地で車を運転することに関して何ら不安を感じることはありません。ニューヨークやロンドン、パリのダウンタウンへも平気で車を乗り入れています。実はカナダで暮らしていた20代の頃、Class4というライセンスを取得し、小型観光バスのドライバーのアルバイトをやっていました。
海外で車があると、好きな時間にどこへでも行くことができるので、生み出される作品のバリエーションが広がります。特に私がライフワークとして取り組んでいる「ヨーロッパの美しい村」の取材は、車でないと旅できないといっても過言ではないでしょう。
実のところ、日本人による海外レンタカーの旅はまだ一般的ではありません。交通ルールが異なる地での運転に不安を感じるというのが最大の理由だと思いますが、車の借り方がよくわからないという人も多いのでしょう。
そこで今回は、海外でレンタカーの借り方、注意点について詳しく書いていこうと思います。ヨーロッパを例にお話していきましょう。
準備編
まずは国際運転免許証の取得からです。日本の運転免許証のみでレンタカーを借りることができる国もあるのですが、違反などをして警察官とのやり取りが発生した際、英語で表記された運転免許証がないと話になりません。よって、どの国へ行くときも必ず国際運転免許証を持っていくようにしましょう。
パスポートと日本の運転免許証を持って最寄りの運転免許試験場か指定警察署に行き、申請書に必要事項を記入して、顔写真1枚と手数料2,300円を払えば、すぐに国際免許証を発行してもらうことができます。有効期限は1年間です。
国際運転免許証があるからといって、日本の運転免許証が不用というわけではありません。現地でレンタカーを借りる際、日本の運転免許証の提示を求められることがよくあります。
レンタカーの予約
海外旅行の日程が決まったら、レンタカーの予約を入れます。どの国もレンタカーは混んでいますので、1日でも早い予約をお勧めします。現地に到着してからレンタカー会社に足を運んでも、車を借りるのは難しいです。仮に空きがあったとしても、人気のない大型車ばかりです。また、現地でレンタカーを申し込むと料金は割高になります。外国人の場合、母国から予約を入れた方が割引料金が適用されるのです。
レンタカー会社は、エイビス、ハーツ、バジェット、シクスト、ヨーロッパカーなど10社以上あります。近年私は、日本に代理店がある「エイビス」と「ハーツ」をよく使っています。
WEB予約より、フリーダイヤルに電話して、オペレーターの方と直接話をしながら予約を入れた方が確実です。保険の詳細を教えてくれます。
まずはオペレーターに行き先(空港)を伝えると、そこに営業所があるかどうか検索してくれます。各国の主要な空港、ダウンタウンには、たいていエイビスとハーツの営業所があります。
日時と飛行機の便名を伝えると、即座に「12日間ですね」という感じで日数を弾き出し、トータル料金を出してくれます。先進国の多くが「走行距離無制限」ですが、念のため確認した方がいいでしょう。カナダ北部のノースウェストやユーコン準州は、1日200kmまでと決められています。そのことを知らず、1日500キロ以上、1週間で3000キロ以上走ってしまうと、後からとんでもない額の請求が来ます。
保険内容は国によって異なります。日本側で入れる保険は、対物、対人、車両、盗難保険のみです。車両に関しては免責金額があるので注意してください。程度の軽い修理であれば保険は適用されず、ドライバーの自己負担になります(免責金額は5~30万と国によって違います)。免責金額をゼロにし、搭乗者保険、フロントガラス損害保険、ロードサービスなどをプラスしたいわゆる「フルカバーの保険」は、現地でしか入ることができません。
予約が完了したら、オペレーターに伝えたE-mailアドレスに予約表のPDFが届きます。それをプリントアウトし、海外に持っていきましょう。
必ず「フルカバーの保険」に入ること
晴れて目的地の空港に到着します。スーツケースを受け取ってゲートを出たら、空港内にあるレンタカー会社のカウンターに歩いて向かってください。深夜0時過ぎの到着であったとしても、予約があればスタッフは待機しています。仮に飛行機が遅れても会社側はそのことを把握していますが、日本出発前に便の遅れがわかれば、念のためレンタカー会社に電話を入れた方がいいでしょう。
問題は、深夜到着便で、スーツケースがロスバゲになったときです。ロスバゲの手続きに1時間以上はかかります。終了後にレンタカーのカウンターに行っても、スタッフは誰もいません。予定された便で客は来ないものだと判断し、帰宅してしまうのです。ロスバゲがわかった時点で、「いまロスバゲの手続きをしているので、カウンターに行くのが1時間ほど遅れます」と電話を入れるようにしてください。
予約があれば車を借りるのはとてもスムーズです。スタッフに国際運転免許証とクレジットカードを提示し、日本の自宅住所、携帯電話番号(+81-90からはじまる番号)を伝えます。ちなみにレンタカー会社はクレジットカードのみとなります。キャッシュ(現金)では車を借りることができません。これは全世界共通です。
手続きのときに必ず「フルカバーの保険に入りたい」と伝えてください。スタッフは即座に理解し、日本側で契約した保険内容に変更を加えていきます。
フルカバーの保険はそれなりに高額です。日本で予約したとき、保険込みでトータル1000ユーロ(16万円)と料金が出ていたとしても、フルカバーの保険料が加わることにより、料金は1700ユーロ(26万円)くらいに跳ね上がります。(東欧など、保険料が2~3倍になる国もあります)
フルカバーの保険は、文字通りすべてがカバーされるので、何かあったときに個人の出費はゼロとなります。しかし保険料が高額になるため、多くの日本人がフルカバーの保険に入らず、日本側で契約した免責金額のある保険のみで済ませているようです。車をぶつけたときなど後から高額な請求がきますので、フルカバーの保険は絶対に入った方がいいでしょう。私はMUSTだと思っています。
海外の予約はアバウトです
レンタカーを借りる際に一つ厄介な問題があります。それは、海外では「希望通りの車がこない」ということです。日本のレンタカー会社は、「コンパクト」を予約したら必ず「コンパクト」が用意されています。しかし海外では、コンパクトで予約を入れても、勝手に「ミディアム(中型車)」や「ラージ(大型車)」に変更されてしまうのです。コンパクトは数が少なく、地方では所有していない営業所がたくさんあります。その日の最終便で空港に到着したりすると、決まって「申し訳ありません、コンパクトはお昼の段階ですべて出てしまいました」と言われ、勝手に大型車に切り替わっています。
コンパクトの料金で上位車種に乗ることができるので、多くの人は大喜びします。フィアット500がベンツCクラスになって文句を言う人はまずいないでしょう。しかし私の場合、それでは困るのです。郊外に点在する小さな村は、小型車でないと入って行くことができません。またかなりの長距離を走るので、大型車だと燃料代が大変です。だから勝手に大型車に変更されていたら、「大型車は嫌です。せめてミティアムでお願いします」と強く言い、変更してもらいます。ミディアムもすべて出ている場合、コンパクトかミディアムが戻るまで4~5間空港で待機することもあります。イタリアのベローナの営業所には、夜の時間帯、ベンツSクラスしかありませんでした。諦めて2週間大型車で取材を行いましたが、燃料代だけで1000ユーロを超えてしまいました。
まだマニュアル車が主流です
日本人にとって厄介な問題がもう一つあります。それはオートマチック車に関してです。ヨーロッパでは急速にオートマチックの電気自動車に切り替わっているとはいえ、まだマニュアル車が主流です。私は日本でマニュアル車(MAZDA CX-5)に乗っているので、欧州ではマニュアル車を好んで運転しています。しかし多くの日本人はオートマチック車を希望することでしょう。
日本側で「オートマチック車限定」で予約を入れたとしても、実際にオートマチック車が用意されているかは、現地に行ってみるまでわかりません。「今日はマニュアル車しかありません」と言われ、空港のカウンターで困り果てている日本人を何人も目にしてきました。
いずれにせよ、予約内容が最後まで正しく反映されているのは日本という国だけです。海外では「予約内容はかなりアバウトである」ということを理解してください。特に車のサイズに関しては、予約通りになることはまずありえません。北米は、欧州以上に適当です。たとえばカナダでは、コンパクトで予約を入れて、実際コンパクトになったことは過去に一度もありません。フォードの大型SUVエクスプローラーや、カマロのスポーツクーペになったときは、さすがにカウンターでキレそうになりました(笑)
手続きが完了すると晴れて車のキーを渡されます。それを持って駐車場に行って下さい。
まずは車の傷を確認しましょう。凹み傷があり、書類に傷のマークがついていない場合は、カウンターに戻って自己申請してください。これは日本のレンタカー会社と同じです。
ナビについて
カーナビは必要です。20年前、まだナビは一般的ではありませんでした。私はフランスでもイタリアでもミシュランの紙の道路地図を頼りに車を走らせ、小さな村巡りを行っていました。目的地を探すのが大変で、よく道に迷っていたものです。
今の時代、地元で暮らしている人もナビを頼りに車の運転を行っています。ナビは、お手持ちのスマホに入っている地図アプリでいいでしょう。Googleマップがお勧めです。もちろん通信環境がなくても、GPS機能をONにしておけばナビ機能は使えます。ただし出発前に地図データをスマホ本体にダウンロードしておく必要があります。地図のダウンロードは、「設定」→「自分の地図を選択」→「ダウンロード」で行えます。地図データはかなり重いので、ダウンロードはWi-Fi環境で行ってください。2023年、iPhoneのiOS17でもようやく地図のダウンロードができるようになりました。
しかしナビに正確さを求めるには、スマホに通信環境はあった方がいいでしょう。海外に行く人は、出発前にWi-Fiルーターをレンタルしてください。どこにいてもネットを使って情報収集が出来るし、メールやLINEのやり取りも可能となります。
近年のレンタカーは、「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応した車が多くなっています。借りた車にその機能が搭載されていたらラッキーと思ってください。自分のスマホをBluetoothか有線で車と接続すれば、ダッシュボードの液晶モニターに自分のスマホのナビが現れます。接続設定は英語になりますが、それほど大変ではありません。
専用ナビを使う
では私はどうしているかというと、実はスマホのGoogleマップを使うことはありません。ガーミンの専用ナビを使っているのです。いまヨーロッパ取材で使っているナビは、2017年にイスタンブールの空港で250ユーロで購入したナビです。専用ナビは4~5年おきに買い換えています。
このガーミンのナビを、フロントガラスの部分に、専用のアタッチメントを介して吸盤で貼り付けています。日本はフロントガラスに吸盤を貼り付けることは禁止されていますが、海外では問題はありません。
専用ナビは、高速道路出口のイラストマップや標識が出るので、道案内が実にわかりやすいのです。もちろん海外で購入したガーミンやトムトムのナビでも、日本語の音声に対応しています。
ただ専用ナビは、最新の地図データは反映されていません。どのナビも2~3年前の地図データが使われているようです。ガーミンのナビは日本にいるときに最新の地図データへの更新ができますが、それでも1~2年前のデータとなります。最新の地図データに関しては、やはりスマホの地図には叶いませんね。
その他の注意点
専用のナビ、もしくはスマホをナビとして使うときに注意しなければいけないことがあります。駐車場で車を停めるとき、必ずナビをアタッチメントから取り外してください。私はガソリンスタンドで料金を払いに行くだけでも、ナビを隠すようにしています。ホテルの駐車場で一晩ナビをそのままにしておくと、翌朝には100%なくなっていると思った方がいいでしょう。車の中の貴重品が盗まれない国は、おそらく日本だけです。
ヨーロッパは、国によってまだディーゼル車が多く走っているので、借りたレンタカーがディーゼル車になることもあります。スタンドで燃料を入れるとき注意してください。ガソリン車かディーゼル車かは、事前に教えてくれないので、自分で判断するしかないのです。スタンドは、日本と同じようにガソリンとディーゼルで給油口がわれているので、間違えることはないでしょう。
どの国も、スピード違反に関してかなり厳しいです。一般道の所々にカメラがあり、まれに5kmオーバーしただけで「ピッカ」とストロボが光る場合があります。違反キップは、2~3ヶ月後、日本の自宅に国際郵便で送られてきます。罰則金はだいたい200ユーロ以下ですが、銀行からの海外送金になるので、手数料をプラスして3万円以上の出費になってしまいます。私は過去に、ドイツとイタリアの警察から違反キップが届きました。
またフランスの田舎道ではよく職務質問があります。どうやらアジア人のドライバーを狙い撃ちにしているようです。パスポートや国際運転免許証はもちろん、トランク、スーツケース、カメラバッグの中と、すべてチェックが入りますので、仕方ないなと諦め、笑顔で受け答えましょう。
返却について
無事に旅が終わり、いよいよ車の返却です。私は帰国前日は空港近くのホテルに泊まり、翌朝、レンタカーで空港へ向かいます。
巨大空港は、レンタカーの返却場所がいくつもありますので、必ず出発ターミナル番号を確認してから向かってください。車を借りたときに、自分の位置をスマホの地図にマッピングしておくといいでしょう。
空港ターミナルが近づくと走行レーンが増えるので、どの車線を走ればいいか戸惑うはずです。すべての空港に必ず「Rental Car Return(レンタカー・リターン)」というサインがありますので、これを見落とさないようにしてください。その走行レーンを走っていくと、レンタカー会社の専用の駐車場に入ることができるのです。
日中であれば端末を持った係員がいて、その場ですぐに車の状態をチェックし、レシートを発行してくれます。
朝早い時間帯(AM4~7時)の出発の場合、返却場所には誰もおらず、カウンターも無人です。その場合、キードロップという方式で車を返却ができます。カウンターに丸い穴がありますので、そこにキーを落としてください。後日、領収書のPDFがメールで送られてきます。
【終わり】
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