カナダ、プリンス・エドワード島

世界で最も美しい島
カナダの東、セント・ローレンス湾に位置するプリンス・エドワード島は、総面積が5660平方キロメートル、四国の愛媛県ほどの島です。人口は約14万人、州民の80%はイギリス系がしめ、フランス系、オランダ系、ドイツ系と続きます。

主な産業は農業と漁業です。肥沃な赤土の大地にはジャガイモが栽培され、収穫高はカナダ国内の30%を占め、特産品として隣国へ輸出されています。海ではニシンやカキなど30種類以上の魚介類が捕れますが、最も有名なのはロブスターです。漁期は春の2ヶ月間のみ、この間、漁師は毎日のように海に出て、沈めてあるトラップを引き上げ、獲物を捕らえています。

近年、島の美しさをアピールする観光業も、経済を支える重要な柱となりつつあります。夏場を中心に、北米やヨーロッパ各地から100万人を越える旅行者が、素朴な景観や美しいビーチを求め、この地を訪れているのです。

アイランダーと呼ばれる島の人たちは、心からこの島での暮らしを愛し、近代文化を受け入れながらも、昔から受け継がれた伝統や価値観を大切にして暮らしています。「自然が豊かで平和なこの島は、子育てをしたり、余生を楽しむには最高の場所」と多くのアイランダーが口にします。

最初の定住民はミクマック・インディアンでした。彼らはこの地を「アベグエイト(波間に浮かぶ揺りかご)」と呼び、狩猟や漁業をしながら静かな生活を営んでいました。

1534年、フランス人のジャック・カルティエが、ヨーロッパ人として初めて島を発見します。その後、長いこと放置されていましたが、1710〜20年頃、カナダ本土のアカーディアから来た農民や植民者たちによって、徐々に開拓がはじまっていきました。

18世紀なかばの英仏戦争で、ノバ・スコシアにあったフランス軍の要塞が陥落したのを機に、島にいたフランス人は追放され、イギリス人が勢力を拡大していきます。それまで島は、「サン・ジャン島」と呼ばれていましたが、イギリスの国王ジョージ3世の息子エドワードの名に因んで「プリンス・エドワード島」と改名されました。

1864年、この島でカナダ連邦発足の会議が開かれました。各植民地の代表団がシャーロットタウンの州議事堂に集まり、独立に向けての話し合いがなされたのです。その3年後に、カナダという一つの国が誕生しました。

「赤毛のアン」の故郷
プリンス・エドワード島の片田舎で暮らす老兄妹マシュウとマリラのもとに、ノバ・スコシアの孤児院から何かの手違いで女の子「アン」がやって来ます。明るく空想好きな彼女が、2人の愛と島の美しい自然に抱かれ、のびのびと成長していく……。1905年、島在住の作家ルーシー・モード・モンゴメリによって生み出された物語『Anne of Green Gables(邦題「赤毛のアン」)』は、時代を越えて読み継がれる不朽の名作として知られています。

日本では、村岡花子訳で『赤毛のアン』という題がつけられ、1952年に三笠書房から刊行されました。戦後の暗い世相の中、この物語は多くの読者の支持を受け、続編も翻訳されていきました。そして70年経った今でも、新たな訳者による新訳本や、物語に関連した本が次々と出版され、年齢を問わず広く読者の心をひきつけています。

『赤毛のアン』に登場するアボンリー村は、今のキャベンディッシュ村のことを指します。アンの家グリーン・ゲイブルズは、モンゴメリのいとこが住むマクニール家の農家がモデルとされ、今ではカナダの国立公園局が管理し、一般公開されています。アンの部屋をはじめ、ダイニングルームやキッチンなどが、当時の家具や調度品を使って物語そのままの姿で再現されており、周辺にはアンが名づけた「恋人の小径」「お化けの森」などの豊かな自然息づいています。また村の中には、モンゴメリゆかりの郵便局や教会、祖父母も家跡があります。

モンゴメリの生家は、ニュー・ロンドン村に今も保存されており、彼女が結婚したときに着用したウェディングドレスや、小説のヒントに使ったスクラップブックが展示されています。

海沿いにあるパーク・コーナー村には、グリーン・ゲイブルズ博物館があります。ここはモンゴメリの母方の叔母の家で、彼女はしばしばここを訪れていました。家のすぐ横にある美しい湖は、物語の中に出てくる「輝く湖水」のモデルになったことで知られています。モンゴメリは、この家の1階にある応接間で結婚式を挙げています。

夏場はたくさんの観光客で賑わいますが、やはりファンの最大の関心事といえば、モンゴメリが一連の作品の中で、「世界でいちばん美しい」と謳っている島の風景でしょう。

織りなす緑の丘、真っ青な海や入江、延々と続く花畑、そこに民家や納屋、教会がポツンポツンと点在している……。自然と人の暮らしが見事に調和した牧歌的な景観は、天から射し込む陽の光によって幾重にも表情を変化させ、思わずため息が出るほど美しい光景を見せてくれます。島を訪れる誰もが「風景を見ているだけで心が浄化されるようだ」と言います。

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