第22回 撮影モード

撮影モードを選ぶ

 どのカメラにも、「P」「Av」「Tv」「M」とアルファベットが書かれた撮影モードダイヤルが搭載されています。Pは「プログラムオート」、Avは「絞り優先オート」、Tvは「シャッター優先オート」、Mは「マニュアル」の略です。写真を撮るときは、この中からどれか一つのモードを選ばなければなりません。どのモードにするかは、被写体によって異なるし、撮影者の好みによっても分かれます。ちなみに私の場合、各モードの使用比率はこんな感じです。

P —25%
Av—50%
Tv— 5%
M —20%

では、それぞれのモードについて解説していましょう。

どのカメラも撮影モードはP、Av、Tv、Mの4つだが、中には6つの撮影モードを搭載したカメラもある。Pプログラムオート Sv感度優先オート Tvシャッター優先オート Av絞り優先オート TAvシャッター&絞り優先オート Mマニュアル

P プログラムオート

 Pのプログラムオートはカメラのデフォルトモードであり、多くの人がP に設定して写真撮影を行っています。カメラが自動で被写体の露出を計測し、適切な絞りとシャッタースピードを弾き出してくれるのです。組み合わせの出し方は機種によって異なりますが、どのカメラも、手持ち撮影したときにブレによる失敗がないよう、早めのシャッターに設定されています。

 たとえばISO感度400に設定し、日中の風景を撮るとしましょう。Pにすると、カメラはF11、1/250くらいの露出をはじき出してくれます。辺りが薄暗くなる夕暮れ時に同じ条件でカメラを向けてみてみると、今度はF2.8(開放)、1/30秒くらいになります。1/30のシャッタースピードがあれば、ギリギリ三脚を使うことなく撮影が可能です。

 つまり、アッと思った瞬間にカメラを向けてシャッターを切ったとしても、Pに設定していれば、適正露出でブレのない作品を生み出すことができる。これがPを使う最大のメリットと言えるでしょう。

 これほど素晴らしいモードであるにも関わらず、私のPの使用比率は25%しかありません。その理由は、風景をテーマにしているからです。風景作品の多くが手前から奥までピントを合わせて撮るので、F22やF32という絞りをよく使います。手持ち撮影のことを考慮し、可能な限り早いシャッタースピードをはじき出すPでは、私が望む風景作品を生み出すことができないのです。

 しかしPは、風景以外の撮影ではよく使っています。たとえば街中でスナップを撮るとき、ヨーロッパの村の表情を次々と切り取っていくときは、何の迷いもなくPに設定します。絞りやシャッタースピードを意識することなく撮影を行い、なおかつブレによる失敗がない作品を求めているからです。

 Pの状態でも、カメラの前後にある物理ダイヤルを回すことで、絞りとシャッターの組み合わせを自由に変更できるカメラもあります。しかし個人的には、この機能は無意味だと考えています。歩いている途中にダイヤルにふれ、せっかくのオート数値が変わってしまうことがよくあり、その度にイライラが募るのです。今はカスタム設定で、「P使用時のダイヤル変更機能をOFF」にして使っています。Pで撮るときは、露出もシャッタースピードもすべてカメラ任せにして完全オートにする。これが私の持論です。

Av  絞り優先オート

 最も使うモードが、この絞り優先オートです。PENTAXもFUJIFILMもCanonもSONYも、撮影に出掛けるときは必ずAvに設定しています。

 Avは、絞り値を撮影者が設定します。数値が決まると、カメラが自動で適切なシャッタースピードを弾き出してくれるのです。たとえば絞りをF16に設定したとしたら、それから先はずっと同じ絞りで撮影が可能です。シャッタースピードは被写体の明暗に合わせて変化していくので、常に適正露出の作品が生み出せるというわけです。

 風景においては、絞り値が最も重要な要素です。私は画面の隅々までピントがきた絵画のような作品が好きなので、常に絞りをF16〜32に設定して撮影を行っています。朝夕など薄暗い場所で撮ると、シャッタースピードは15秒以上と極端に遅くなります。撮影時、適正露出にしようしようと頑張ってくれているカメラに急に親しみが湧いたりもします。

 稀にボケ味を生かした風景作品を生み出すことがありますが、当然その時も撮影モードはAvにし、絞りを開放F2.8かF4にして撮影を行っています。

Tv(もしくはS) シャッター優先

 Tvはシャッター優先オートです。スポーツや動物、鉄道写真家の多くがこのモードに設定して撮影を行っています。動いている被写体の動きをピタリと止めて写すには、1/4000、1/8000という高速シャッタースピードが必要になってくるからです。

 使用比率からもおわかりいただけるように、私はTvをほとんど使いません。以前友人から頼まれて、彼の愛犬が公園を駆けているシーンを撮ったことがあります。その時はTvに設定し、1/4000で撮影を行いました。絞りがいくつになったのかは意識しませんでした。

M マニュアル

 Mは、絞りとシャッタースピードを自分で設定する完全マニュアルモードです。適正露出の写真を撮るには、カメラの露出計に頼らなければなりません。Mに設定をすると、ファインダー内、もしくはカメラ上部の液晶パネルに、露出のインジケーターが現れます。このバーの動きを見ながら、絞りかシャッタースピードを調整し、適正露出になるようにしてあげるのです。

 プロの中には、どんな撮影でもMしか使わない人がいます。経験と勘を頼りに瞬時に絞りとシャッタースピードを弾き出し、露出を合わせてシャッターを切っています。時々、あえて露出アンダー、露出オーバーにすることにより、個性ある作品を生み出しているのです。私はそんなプロを見て「凄いなあ〜」と感心ばかりしています。もちろん私は、そんな面倒なことは嫌なので、風景やスナップを撮るときにMモードは使っていません。

 しかしMの使用比率が20%とそこそこ高めなのは、ストロボで商品撮影する時は必ずこのモードを使っているからです。まずストロボを1回テスト発光させ、単体の入射光式の露出計で露出を計ります。露出計に「F8、1/125」というような感じで適正露出が表示されるので、その二つの数値をカメラに設定し、本番の撮影を行うのです。

 4×5や8×10の大型フィルムカメラを使うときは、当然M設定となります。そもそも大型カメラには、露出計が搭載されておらず、レンズ側で絞りとシャッタースピードを設定しなければなりません。つまり大型カメラに限って言えば、Mの使用率は100%になります。

どのモードも露出のコントロールは可能

 写真を撮るとき、P、Av、Tvのいずれかのモードに設定すれば、誰もが簡単に素晴らしい作品を生み出すことが可能です。なぜなら、絞りかシャッター、またはそのどちらかに優先権を与えても、常に適正露出で撮影できるようになっているからです。しかし露出に関しては注意が必要です。カメラに内蔵されている露出計では、時として適正露出を弾き出すことが困難な場合があるからです。

Avで風景を撮影。カメラの露出がプラスマイナスゼロでも、このようなコントラストがある風景を撮ると適正露出にならない。

 たとえば青空に眩しい太陽と真っ白な雲が浮かんでいる風景を撮るとします。露出計はその明るい光に引っ張られ、全体の露出がアンダーになってしまいます。真っ黒なコートを着た人を撮る時も同じです。露出計は、黒っぽい被写体をとらえると、今は光が足りないと勘違いし、全体の露出をオーバーにしてしまいます。P、Av、Tvのどのモードでも、このような露出による失敗は頻繁に起こります。

 皆さんも記念写真を撮ったとき、背景が白っぽくなったり、顔が黒く潰れてしまったりした経験があるでしょう。これは皆さんの腕が悪いのではなく、カメラの露出機能に問題があるのです。

 カメラに搭載されている内蔵露出計は反射光式と呼ばれ、レンズを通して被写体に当たっている光を計測しています。そのため、被写体の中に極端な明暗差があると、カメラの露出計は計測時に混乱してしまうのです。特によく晴れた日中は、空も地上のコントラストが高まるので、ほぼすべての写真で適正露出がきません。逆に光が均一になる曇りや雨の日は、オートで撮影しても、完璧な露出で作品が生み出されるのです。

 多くのカメラに、「マルチ測光」「中央部重点測光」「スポット測光」という測光方式の切り替え機能が搭載されています。被写体の光をより詳しく分析し、適正露出を弾き出す方式です。以前私は、この測光方式をマメに切り替えて撮影を行っていました。でも被写体は、私たちが考える以上に複雑な光を放っています。測光方式を切り替えるだけでは、適正露出にならないことがわかりました。また、戻し忘れによる失敗も多かったことから、この測光モードの切り替えは一切使わなくなってしまったのです。今はどんな被写体も、デフォルトの「マルチ測光」で撮影しています。

 これとは別に、反射率18%のグレーカードをレンズでとらえて、正確な露出を弾き出す方法もあります。でも通常の撮影で、このような面倒なことはしていません。実際撮影現場で、グレーカードを使って露出を計測しているプロの写真家は一人もいないでしょう。

 カメラの露出計で計測したときの露出のバラツキを、どうにかできないだろうか……。私は何年も対策方法を探ってきましたが、最終的には、撮影時に露出を変えて何枚もの写真を撮り、その中から適正露出の写真を選ぶ、というスタイルに落ち着きました。

P、Av、 Tvでも常に露出補正ダイヤルを使う

 一眼レフもミラーレスも、露出補正の物理ダイヤルが搭載されています。最新のミラーレスカメラでも、この部分だけはアナログです。「頻繁に使う露出補正だけは物理ダイヤルとして残して欲しい」という多くのプロやアマの意見が生かされているからです。

 私はAvで風景撮影をする際、この露出補正ダイヤルで露出こまめに変え、必ず2〜8枚の写真を撮るようにしています。まずはカメラの露出計が弾き出した適正露出で1枚写真を撮ります。次にマイナス0.3で撮り、プラス0.3でも撮ります。露出を変えて複数枚撮れば、必ず1枚は適正露出の写真があるのです。そう、まさに「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」の世界です。(露出補正に関しては後章で詳しく書きます)

 つまりP、Av、Tvのどのモードで撮る時も、必ず露出補正ダイヤルによって露出をコントロールする。これが今の私の基本撮影スタイルです。

物理ダイヤルとして搭載されている露出補正ダイヤル。露出は液晶の数値を見て切り替えるよりも、断然こちらの方が使いやすい。撮影時、最も使うダイヤルと言ってもいいだろう。

【次号に続く】

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