生まれ故郷信州をモノクロームで撮る
20代の頃、松本の実家には年に1〜2度里帰りする程度でした。故郷にそれほど関心がなかった理由の一つに、松本平、安曇野の風景にときめかなくなっていたからです。社会の発達、人口の増加とともに、人の住む場所は拡張され、交通網も整備されて、緑につつまれた素朴な田舎の雰囲気は年々失われていきました。帰郷し、国道沿いに建ち並ぶ大型チェーン店越しに北アルプスの山並みを眺めると、なぜか不思議な脱力感を覚え、こんな風景にカメラを向けても仕方がない、とすら考えていたのです。
でも写真家としてキャリアを積んでいくと、風景に対する自分の固執した考えに少しずつ変化が生まれてきました。日本はどの町や村を訪れても、新しいものや古いもの、洋風や和風など、ありとあらゆるものが混合しています。もしかしたら、この一風変わったスタイルこそが、日本の一つの文化であり、個性であるのかもしれない……と思いはじめてきたのです。
ある年、私は生まれ故郷「信州」をテーマにし、作品集を作ることに決めました。そのとき真っ先に考えたことは、「故郷をどのように撮るか」です。
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